矛盾とエゴと良心の呵責

午後からHY氏に会う。
このヒト、わたしのこと好きなんだよね…いいのかな・・・。
かなり罪悪感で、まともに顔が見られなかった。


あまりに素直すぎる相手だと、嬉しいって思う前に引いてしまう。
条件とか性格とか、おつきあいするのにチェックする事柄の前に、
HY氏はストレートすぎて、私はちょっと怖気づいてしまう。

MY氏と一緒にいるときに、HY氏のことを考えないわけじゃない。
HY氏と一緒にいるときに、MY氏のことを忘れられてるわけじゃない。
どっちも大事で、どっちもわたしを「かわいい」って思ってくれて。
だからわたしは、自分から答えは出さない。


MY氏はオトナだ。
オトナだから、わたしはいつも不安だ。
やきもちをやくようなヒトじゃない。
こうしたら、って自分の意見を言ってくれるヒトじゃない。
すべてはわたしが決めることで。
わたしはMY氏を読みながら、ゆっくりコマを進めていく。
MY氏の過去に、ちいさくやきもちをやくわたしを、
MY氏はよしよしよし、と、その大きな手のひらでなだめながら、
「そんな過去のこと・・・」と、ほんのすこし戸惑った顔をする。
わたし、MY氏を困らせてる。
その事実がうれしくて、わたしはMY氏にすり寄って甘える。
でも、逆はない。
「好きにしたらいいよ」って、余裕の顔して言い放たれて。
ほんとうに、好きにしていいの?
わたしが他の誰かのものになっても、そうやって平気な顔をしているの?
そのくせ、
「他の誰かのところに行っちゃったら、もうこんなふうにしてあげられないよ」って
髪をなでてくれる。
おでこにキスをしてくれる。
気だけ持たせて。
ずるい、ね。


HY氏はまっすぐだ。
まっずぐだから、わたしはいつも気後れがする。
さみしいって、会いたいって、
照れくさいようなことでも、HY氏ははっきり言う。
考えてることがすぐ顔に出る素直なヒト。
わたしのことを、ほんとに好きで、ほんとに大切に思ってくれていて。
このヒトを好きになれたら、このヒトだけ見えていたなら、
どんなに幸せになれるだろう。
エスカレータで、あの人の腕に、そっと頭をもたせかけた。
抱き寄せた腕に、ほんのわずか力がこめられたのがわかった。
甘えて名前を呼ぶと、はにかんで笑って、心底嬉しそうな顔をする。
わたしの気持ちが微妙に逸れているのを知っていて、
「いつか振り向かせてみせる」って、一生懸命になってくれる。
電話もメールもかかさない、王子様みたいなヒト。
でもわたしは、HY氏の正しさにあらがっている。怖がっている。
信じているから。信じられているから、うしろめたい。
アナタしか知らなければ良かったのに。
その伸びやかな腕で、わたしを捕らえて離さないから。
追われるから、逃げたくなる。逃げるから、追う。
理想の塊みたいなヒトだからこそ。
眩しすぎるなんて、反則だ。


どっちのことも選ばなかったとしても、この痛みは消えない。
でも。
どちらもわたしを選んだら、今度こそ逃げられない。