揺らいだ 有限 つまりは

未来が揺らされるようなことがあったせいか
それともわたしが、あまりにも憔悴していたせいか
彼が突然来て、
「靴が欲しいんだ」と、ほぼ強引に買い物に連れ出されました。
口を開けば「どうしたらいい?」としか言えないわたしに
くり返し、「大丈夫だから」「大丈夫だから」と答えながら
彼はどんなことを考えていたのかなぁ。


今、ただ信じられるのは、つながれたこの手。


彼はいつもの柔らかい瞳で口調で態度で、
何もなかったように、錯覚してしまいそうなほどいつも通り。
ただ手だけをずっと強く握って、
ARMANIで黒いスリッポンを買ったあと、
わたしにもCole Haanで靴を買ってくれました。
ブラウン系の、ころんとしたまるいフォルム。
靴が好きなのを知っているのです。
言葉にはしないけれど、きっと彼なりの気遣いなんだろう、って思って
胸が痛くなりました。


このひとがいてくれれば。


大事にされていると、支えてもらっていると感じるのに
素直にその愛情に身を浸していられたなら、どんなに幸福かと思うのに。
わたしには、何もしてあげられない。
もしかしたら、そばにいることさえも。