感覚だけが散らばって 私はまだ上手に片付けられず

暑かったり寒かったりの繰り返しで、
体調を崩しぎみ。
夕方、耳をすませれば
聞こえてくるのは、鈴虫の音。
いつの間にか、もうすっかり秋なんだなあ。


一日おうちにいて、
おうちのことをしたり、編み物をしたりして過ごす。
夕方、母の買い物につきあって外に出ても、
気が滅入って仕方がない。
この間までは調子がよかっただけに、
がくっとくると、反動が大きくて、その落差がちょっとつらい。


知り合いに会っても、視線を合わせなくてすむように、
帽子をきゅっと深くかぶった。
こんなになってまで、
『きちんと挨拶のできるいいお嬢さん』の姿を崩せないわたし。
ずっと『いい子』と思われてきたけれど
本当は、全然『いい子』なんかじゃなかった。
でも、周りがそう言うから、褒めてくれるから、
嬉しくて、ずっと『いい子』って思ってもらえるように、振る舞ってきた。
その仮面は、いつしかきっちりと張りついて、
今はもう、どんなわたしが本当のわたしなのか、わからずにいる。
わたしでさえ。


母から、
細かい、と、こだわりすぎる、と言われたけれど
だから治らないんだ、と言われたけれど
気になって仕方ない、どうしようもないのは、どうしたらいいんだろう?
それが叶えられれば、わたしの気持ちは満たされるのに。
気にしないでいようとすることのほうが、ずっとずっと負担になっているのに。
そう思うなら、そう言えば、少しは自分を楽にしてあげられると思うのに、
言えない。
言えないまま抱えて、また、ひとり。


母なりの励ましやアドバイスだと受け止められれば
こんなふうに苦しくなったりはしないんだろう。
わたしは、ただ、認めて欲しいだけなのに。
わたしは、こうなんだと、
あなたの知っている娘はずっとこういう性格だったのだと、
あなたの知らない娘を否定しないで欲しいだけなのに。
「そんなに繊細だった?」なんて、
冗談交じりに言われることにさえ、傷つけられて、
どうして穏やかにいることができるだろう?
知らないことに対する無意識な無神経が、わたしを蝕んでいく。
蚕が桑の葉を食べるくらいのスピードで。


こんなとき、実家を出て良かったと思う。
自分の居場所があることに救われる。
わたしの帰る場所は実家じゃないと、
実家では落ち着いて過ごせないのだと、
心配する両親にはとても言えないけれど、
ここは、わたしの気持ちの帰る場所じゃない。


いつから、こんなふうになっちゃった?